ご挨拶

当研究会発足の契機は、兵庫医科大学放射線科と日立メディコ社の共同研究による「肝シミュレーションソフト」の開発でした。2003年9月以降、5回にわたり本ソフトの研究会が開かれ、肝切除術における使用経験や他社ソフトとの比較などが活発に論じられましたが、より広い分野での議論と意見交換を求めて発展的解消をすることとなりました。その後、各社の肝臓シミュレーションソフトによる手術支援や、バーチャル・エコーによる経皮的ラジオ波焼灼術のナビゲーションシステムなど、肝臓内科・外科そして放射線科の分野も含めた研究を目的として『肝シミュレーション研究会』が発足した次第であります。

当研究会は、第2回より名称を『肝癌治療シミュレーション研究会』と改め、肝臓領域での外科手術、移植術、内視鏡下外科手術、経皮的ラジオ波焼灼療法、IVR等の治療を安全かつ正確に施行するためのシミュレーション・ナビゲーションの研究・開発およびこれらの普及、ひいては肝疾患治療の標準化、および安全性の向上への寄与を目指すこととなり、それに賛同する肝臓外科・内科、放射線科の医師、医用工学系の技術者・研究者におよぶ幅広い会員により構成されております。

肝臓の立体構造の把握は、肝疾患の治療において不可欠なものであります。治療計画を立てる際、医師の間で病変の位置、脈管との関係を正確に把握すること、肝臓の立体イメージの共有が手術やラジオ波治療等における治療時間の短縮、脈管損傷の防止、ひいては侵襲の軽減や患者のQOLの向上につながります。しかし、経験の少ない医師にとって、超音波やCT、MRI、血管造影などの2次元画像をもとに肝臓の立体構造を正確に把握することは、困難な場合が多いと思われます。

近年の治療支援画像の技術進歩により、医師同士の立体イメージの共有が容易になり、3次元画像をもとに議論し治療計画を立てることが可能になりました。すでに肝細胞癌に対する系統的肝切除のシミュレーション、生体肝移植ドナーの肝容積測定、バーチャル・エコーによるラジオ波治療のナビゲーションなど、優れたシミュレーション・ナビゲーション技術が開発され、普及しつつあります。このような治療支援画像の発展は、従来経験豊富な医師だけに許された「職人芸」と呼ばれる治療技術を一般の医療の場に敷衍するとともに、治療の安全性を高める端緒となっております。

当研究会では肝切除のシミュレーション、ラジオ波治療のナビゲーションを中心とした治療支援画像の使用経験、あるいは新たなシミュレーション・ナビゲーションのアイデアなど、各領域の医療従事者が行っている創意、工夫、またこれらの成果・情報を共有することにより、さらなる発展を目指す次第であります。皆様の積極的なご参加を期待いたします。

特別顧問
幕内 雅敏
東京大学 名誉教授

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