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気分障害の増加は、すべてのライフステージにわたっています。特に、就業世代については、長引く不況や経済状況の悪化、失業率の上昇などを背景に、うつ病を惹起する種々の社会・心理的要因が増加しており、この点は近年大きな社会問題となっている高い自殺者数との関連が指摘されています。また、著しい高齢社会の進展に伴い、うつ病の好発年代である高齢者層の人口が増えていることも重要です。高齢者では、身体疾患、孤独、経済的困窮などがうつ病と関連します。さらに、若年者層のうつ病有病率の増加も指摘されています。
若年者のうつ病・抑うつ状態は、これまでの啓発活動で盛んに紹介されてきた、「きまじめ、熱心、几帳面、責任感が強い性格。一般にうつ病は重く、休養と治療が必要で、しっかり治療すれば、良くなることが多い」という典型的なうつ病のイメージに合わない特徴が認められることがあるため、「新型うつ病」や「非定型うつ病」と呼ばれ、なかば現実の苦難から逃げたがる怠け者扱いされ、復職の壁が高く設定されるようなことも耳にします。しかし、うつ病の病像は人により異なります。患者さんを安易に型にはめて理解し、通り一遍の対応をすることは適切ではありません。
近年、うつ病の過剰診断、安易な抗うつ薬療法、3分診療などが批判の対象とされてきました。これは、身を粉にして診療にあたっている、こころある精神科医にとってはまったく不当な批判です。しかし医療者側も反省すべきところは反省し、つねに診療レベルの向上に努めることの大切さは言うまでもありません。さらには、患者数に比して精神科専門医が不足している、精神科の診療報酬が低い、など精神科医療制度の改善にも働きかける必要があるでしょう。
精神科の治療は、患者さん一人一人がもつ心理的、生物的、社会的要因を分析して、多次元に見立てをたて、それにあわせて、精神療法、疾患教育、薬物療法、環境調整、リハビリテェーション(復帰リハ)を組み合わせて行うべきものです。うつ病・抑うつ状態で受診する患者さんが急増するなか、医師だけの力で、このような行き届いた治療を提供することは困難になっています。看護師、臨床心理士、産業カウンセラー、スクールカウンセラー、産業医など多職種の方々との連携が不可欠なのです。
日本うつ病学会は今後も、うつ病、双極性障害(躁うつ病)などの気分障害の診療レベルの向上を目指して、会員相互の自己研鑽を積むとともに、気分障害の研究をあと押します。また、我が国における適切なうつ病対策のあり方を常に考え、情報を発信してゆきたいと思います。
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